こんにちは、カラープランナーのかわべ みえ です。
歴史を追ってみている色の世界、江戸時代まで進んできました。
ご興味いただけましたら、これまでの記事もお読みくださいね。
260年と長く続いた江戸時代。
前半と後半で大きく趣きが異なります。
また、様々な文化の中でたくさんの色が生まれた時代の一つです。
今日は江戸時代に生まれた色のご紹介 第一部です。
上方の町人文化が中心の江戸時代前半
江戸時代に入っても、桃山時代からの派手で奇抜な芸術は続きました。
17世紀末には長く続く太平の世の中で、富裕化した町人が
文化の中心となり、元禄文化が栄えます。
この頃、印刷技術が発達し、町人が文学に触れるようになりました。
井原西鶴の「好色一代男」や近松門左衛門の浄瑠璃「曽根崎心中」が
人気を博し、その影響で本当の心中も流行し、
心中物の上演は禁止となったほどでした。
江戸時代前半は文化の中心は「上方」でした。
文化の中心が江戸へ
江戸時代後半(19世紀)になると経済の中心が
上方から江戸へと移ります。
化政文化と呼ばれ、風刺や川柳、狂歌が出回るようになりました。
「東海道中膝栗毛」や「南総里見八犬伝」はこのころの作品です。
また、江戸時代は三大改革と呼ばれる「享保」、「寛政」、
「天保」の改革により奢侈禁止令が出されていたため、
庶民たちは質素倹約に努めなくてはなりませんでした。
絹の使用禁止、紫根や本紅などの高価な染色も禁止など、
様々制約がありましたが、そのような中でも人々は工夫し、
表は木綿で地味な着物も、裏地は趣きのある様々な
お洒落を楽しんでいたようです。
これが「粋」なお洒落を生んだ、大きな理由の一つと言われています。
この派手な色の使用が禁止されていたところから、
「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃ ひゃくねず)」と呼ばれる
茶色と鼠色の色名がたくさん生みだされました。
実際にはこの2つの色で1000に近い色名があったようです。
これらの色は別記事でご紹介したいと思います。
和の色名
御所染(ごしょぞめ)
寛永時代(1624~1644)に
御所の女官から流行した色です。
紅碧(べにみどり)
青と紅を掛け合わせた色です。
碧は「みどり」と読みますが、青のことです。
中紅(なかべに)
江戸時代前期の色名です。
紅を「べに」と読むようになるのは江戸時代からで、
それ以前は「くれない」と読んでいました。
紅鬱金(べにうこん)
黄色の鬱金色の下染に、紅花もしくは蘇芳(すおう)を
上掛けした色で、江戸時代前期に人気がありました。
似紅(にせべに)
高価な本紅は庶民には禁止されていたため、
安い蘇芳を原料にして染めた紅色です。
甚三紅(じんざもみ)
蘇芳による紅染の代用染です。
井原西鶴の「日本永代蔵」には江戸時代前期、
桔梗屋 甚三郎が紅花を使わずに紅梅色を染め出し、
成金になった話があります。
その紅が「甚三紅」と呼ばれたものです。
似紫(にせむらさき)
江戸時代前期、本紫は禁制だった(紫根は高価かつ
染めに手間がかかった)ため、
紫に似せた「似紫」が流行しました。
これにより庶民も紫に手が届くようになりました。
似藤(にせふじ)
蘇芳と鉄で染めた紫色です。
縹色(はなだいろ)
「はなだ」の「はな」は露草のことです。
花の青い汁で摺染(すりぞめ)したことに由来しています。
縹色は藍のみで染められる強い青です。
江戸時代は「花色」とも呼ばれていました。
濃花色(こいはないろ)
縹色より濃い青です。
熨斗目花色(のしめはないろ)
「熨斗目」は武家の礼装の裃(かみしも)の下に
着用した小袖のこと。
納戸色(なんどいろ)
江戸時代からの色名で、「御納戸色(おなんどいろ)」とも呼ばれます。
藍染の布を納戸にしまっておくと、色が褪せて、
落ち着いた色になったことから名づけられたと言われています。
この他にも「納戸の入口に引かれた幕の色」や「薄暗い納戸の中の薄暗い色」、
「江戸城の納戸に出入りしたお役人の着物の色」などたくさんの説があります。
江戸時代を通して、男性の着物の裏地で人気があり、
末期には女性の着物にも用いられるようになりました。
そして、色が褪せた藍染にさらに別の色をかけあわせて、
〇〇納戸と呼ばれるたくさんの色がうまれました。
深川御納戸(ふかがわおなんど)
深く渋い青緑色です。
薩摩納戸(さつまなんど)
「薩摩」は緑系の色が多いです。
鉄御納戸(てつおなんど)
色名の最初に「鉄」、「錆」がついたり、
後ろに「煤竹」がつくとくすんだ色になります。
これは納戸色をくすませた色で、
江戸時代には日常的に使われていました。
錆臙脂(さびえんじ)
臙脂色がくすんだ色です。
伽羅煤竹(きゃらすすたけ)
伽羅色をくすませた色です。
江戸時代、歴史が長い分だけ色もたくさん誕生しています。
他の色のご紹介は別記事にてしたいと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。