天然染め~薬にならない植物はなく、染料にならない植物はない2~

nibiiro 色彩
鈍色(にびいろ)
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こんにちは、カラープランナーの かわべ みえ です。

19世紀半ばに化学染料が発見されるまで、
人間が見続けてきた色は全て天然の色でした。

繊細でうつろいやすく、染まりにくい。
けれど染まった色はとても長く美しく保たれます。

古代の人は身近な植物を採って染めていました。
相手を思いながら染める。
とても心のこもった贈り物です。

よろしければ前回の記事も併せて読んでみてください。
天然染め~薬にならない植物はなく、染料にならない植物はない~

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青系の色

蓼藍 たであい

tadeai

蓼藍は東南アジア原産のタデ科の一年草で、
日本へは5世紀ころに中国から伝わりました。

青系の色のほとんどに使われている、と言える植物です。

細かく刻んで水の中で揉むと濃い青緑の染液ができます。
この生葉染だと染められる期間が限られてしまいます。

そのため、葉を腐らせ発酵させて蒅(すくも)にする蒅法や
水にしばらく浸けて溶出した色素を灰で沈殿させる沈殿法が考え出されました。

藍の仲間はインド藍、ヨーロッパの大青(たいせい)、
中米やアフリカ中央部東海岸に生育するナンバンコマツナギ、
沖縄の琉球藍など世界中に分布しています。

山藍 やまあい

山藍はトウダイグサ科の多年草で、
原始的な染色法である摺染の「青摺(あおずり)」に用いられます。

藍と名前がついていますが、藍の成分は含まれておらず、
そのため時間が経過すると茶色に変色します。

露草 つゆくさ

ツユクサ科の一年草で、露草も山藍と同様に摺染に用いられてきました。

水にあうと色が流れてしまいますが、
この特性をいかして「青花紙」がつくられます。

青花紙は、友禅の下絵描きや、陶磁器の絵付けで、
絵の具のようにして使われます。

紫系の色

紫根 しこん

shikon

紫草はムラサキ科の多年草で、
5月末から6月にかけて白い花を咲かせます。

大分県竹田市は産地として有名です。
また、京都の「紫野」という地名は、紫草がたくさん生えていた場所で、
司馬遼太郎さんは、街道を行く「大徳寺散歩、中津・宇佐のみち」の中で、

「紫野とは、染料の紫をとる紫草がはえている野をいう。
標野のしめはしめ縄のしめと同義で、しめのとは
”占められている野”を言い、古代の皇室や貴族が猟をする
禁野(きんや)をさす。紫野とは接続していたらしい。
紫野もまた禁野なのである。」

と書かれています。

また、紫草には炎症を抑えたり、解毒・解熱の薬効があります。
貴族たちは紫草を探して掘る「薬猟(くすりがり)」をしたり、
江戸時代にはお殿様が病のときに頭に紫色の鉢巻きをしていたそうです。

先人たちの知恵ですね。

染色には赤みを帯びた根の外皮を使います。

紫草は環境の変化に大変敏感で、
現在では自生する紫草を見ることは極めて難しいです。

稀少かつ高価な植物染料の紫根染の衣裳を纏える貴族は、
権力財力ともに超一流だったと言えます。

黄系の色

刈安 かりやす

「正倉院文書」にすでに登場している染料で、
黄系の色名としてはもっとも古いものと言われています。

ススキによく似たイネ科の多年草で、
黄草(きぐさ)とも呼ばれ、古代より
庶民の衣服の染料として用いられてきました。

刈安という名前は、かりやすいという意味で
付けられたとも言われています。

黄蘗 きはだ

kihada

ミカン科の落葉高木で山地に自生していて、
樹皮の内側に鮮やかな黄色のコルク層があり、

この部分が健胃・消炎の漢方薬「黄檗(おうばく)」、
そして染料として使われてきました。

強い殺菌作用があり、古くは経典を書写する用紙を黄蘗で染め、
虫の害を防いだり、新生児を黄蘗で染めた布でくるみ、
免疫のない赤ちゃんを守っていました。

支子(梔子) くちなし

kuchinashi

アカネ科の常緑低木で、果実が熟しても口を開かないところから
「クチナシ」と名付けられたとも。

「延喜式」では「支子色」は赤が少し入った黄色の支子の実の色を指し、
支子で染めた黄はあえて「黄支子」と表記されています。

黄色系はその他、楊梅(山桃・渋木) やまもも、槐 えんじゅ、
なども染料として用いられます。

緑系の色

植物の葉がもつ葉緑素は弱い色素のため、
時間が経過すると茶色に変色し、水で流れてしまいます。

緑系の色を出すには、青系と黄色系の染料をかけあわせます。

茶系の色

丁子(ちょうじ)、胡桃(くるみ)、阿仙(あせん)が
染料として用いられます。

黒系の色

矢車 やしゃ
yasya

矢車(やしゃ)とは、ハンノキ、ヤシャブシの実のこと。
乾燥させた実を煎じて染料として使います。

喪に服す色「鈍色(にびいろ)」は多く矢車や橡で染められます。

黒系の染料はこの他に、橡(つるばみ)、団栗(どんぐり)、
檳榔樹(檳榔子)(びんろうじゅ・びんろうし)などがあります。

2回にわけて天然染料について書いてきました。
便利な化学染料におされ、天然染料は影をひそめ、
意識して繋いでいかなければ失われてしまう恐れがあります。

同じ植物でも産地が異なると、異なる色になってしまったり、と、
難しい部分も多くあります。

昔、栽培されていた場所で、植物の再生から
はじめないといけないものもたくさんあります。

ただ、化学染料にはない良さもあります。
特に日本の草木染は身体にいいとされる植物で染められています。

ぜひ、知っていただいて興味をもっていただけたら嬉しく思います。

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