こんにちは、カラープランナーの かわべ みえ です。
近畿地方、入梅は早かったのですが、
梅雨の晴れ間でとても爽やかな過ごしやすい日よりです。
今日は和の色名 紫系の色を紹介していきたいと思います。
世界中の憧れの色
紫はいつの時代も、「高貴な色」の代表で、
世界中で美しい紫は憧れの色、とされてきました。
天然染料の時代、紫を染めだすにはとても貴重なものを使うため、
高価でありました。時代が変わり、化学染料の時代となっても、
「高貴」という印象は変わることなく存在しています。
紫(むらさき)
紫系の色の総称です。
古代から日本では最高位の色でした。
色見本は青みの紫と赤みの紫の代表のような色です。
紫根(しこん)
紫根で染めた濃い紫色。
色名というより、染料の名前です。
※染料の紫根についてはコチラもあわせてどうぞ。
本紫(ほんむらさき)
江戸時代、伝統的な紫根を使わない紫色が登場します。
これに対して、本当の紫、という意味を込めて、
この色名で呼ばれるようになりました。
紫根で染めた紫色で別名を「縁色(ゆかりのいろ)」。
※紫を「ゆかり」と呼ぶことについてはコチラをどうぞ。
滅紫(けしむらさき)
くすんだ紫色。
「滅(けし)」とは、色みを落とした「消す」にかかる意味を
表現しています。
現存する紫根染されたものは、そのほとんどが赤褐色に変化していて、
紫と滅紫を見分けるのはとても難しいようです。
中滅紫(なかのけしむらさき)
滅紫より少し明るい色です。
紫の本場
平安時代より紫草は武蔵野のシンボルになるほど群生していましたが、
武蔵野が辺境の地であることには変わりありません。
また、江戸も京都から見れば田舎。
そんななか、唯一自慢できたものが「紫の本場」だったのです。
京都の染師 石川屋が伝統の古代紫を京紫に対し、
流行の今紫を江戸紫と名付けて売り出し、
江戸っ子らしい自慢の色は江戸紫となりました。
※江戸紫、京紫についてはコチラをどうぞ
江戸紫の鉢巻きをつけた江戸の粋な男性ぶりを表す
キャラクターである、「助六」。
市川團十郎家のお家芸である歌舞伎十八番の一つで、
上演回数が多く、また上演すれば必ず大入りになるという人気演目でした。
助六は鉢巻きを右側で結びます。
反対に左側で結ぶのが「病鉢巻(やまいはちまき)」。
病気であることを表しています。
これは紫草の根、「紫根」には解毒とか解熱作用があることから
使われていた民間療法のようなものの一つ。
美しい病人は「恋の病」をあらわしています。
また、余談ですが、この助六の恋人が吉原の花魁「揚巻」。
揚は油揚げで「いなり」、巻は「巻き寿司」。
この2種をつめたものを「助六寿司」と言います。
今紫(いまむらさき)
今紫の「今」は、流行の、とか最新の、と言った意味です。
つまり、今、流行っている最新の紫、という意味。
(※ 江戸時代の最新です。)
古代紫(こだいむらさき)
古代を連想させる色、という意味です。
江戸時代に流行した鮮やかな江戸紫に対して、
ややくすんだ紫です。
和の色名
淡紫色(たんししょく)
浅紫(あさきむらさき)よりさらに淡い紫色。
南部紫紺(なんぶしこん)
岩手南部地方に伝わる南部紫根染。
良質な紫草が多くあり、岩手根紫(いわてねむらさき)
という名前で、鎌倉時代より有名でした。
染料は「紫根」。色名は「紫紺」。
色名はややこしいですね。
京藤(きょうふじ)
少し濃い目の藤色です。
下色の蘇芳(すおう)を濃い目に染めます。
藤色についてはコチラをどうぞ。
薄藤色(うすふじいろ)
藤色を薄くした色です。
淡藤色(うすふじいろ)
ややこしいですが、同じ読みの色名です。
日本語的には、
「薄い」は、色や光などが濃くない。
「淡い」は、色や味などが際立たず、薄い。
だそうです。
二人静(ふたりしずか)
室町時代に、足利義政が能の「二人静」を舞ったときに、
紫地に鳳凰の丸紋の金襴の衣裳をまとったことから、
色名が残っています。
菫色(すみれいろ)
青みを帯びた鮮やかな紫。
すみれの花の色で、英語ではバイオレットと表記される色です。
平安時代から襲の色めで人気の色でしたが、
色名としては明治時代以降に誕生しました。
源氏鼠(げんじねず)
光源氏の優雅さをイメージさせる、江戸時代に生まれた色名です。
貴族鼠(きぞくねず)
江戸時代に生まれた色名です。
桔梗鼠(ききょうねず)
桔梗色に鼠色をかけあわせたもの。
紫のご紹介は以上です。
高貴な色 紫は魅力的な色ではありますが、
使うにはなかなか難しい色だったりもしますね。
これからの季節、浴衣などで紫が入っていると、
どこか涼し気に感じます。
さて、2020年2月からご紹介をはじめた和の色名。
残すところ、あとは白と黒のモノトーンのご紹介のみとなりました。
次回の更新が和の色名、最終回です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。